📚 犬猫 研究論文 — 2026.04.21
注目論文 5件
1. 🧠 行動・認知科学
犬の気質とコルチゾール・セロトニン濃度の相関——Wesenテストスコアが高い犬ほどストレス低く「幸福ホルモン」が高い(PLoS One, 2026)
📅 2026.02.04
韓国・慶北国立大学校のYoon M.らがPLoS Oneに発表した研究で、犬の気質評価テスト(Wesenテスト)のスコアと唾液中コルチゾール・セロトニン濃度の関連が系統的に検証された。雌雄合計24頭を対象に、「社会性」「音響安定性」「運動安定性」「遊び・捕食欲求」「ストレス時の行動」「分離」等7つのサブテストを実施し、評価前後で唾液サンプルを採取、ELISAで各種ホルモン・神経伝達物質を測定した。その結果、テスト前後を問わず総合スコアと評価前コルチゾールには有意な負の相関が確認された。つまり「気質スコアが高い(望ましい行動特性を持つ)犬」ほど、ベースラインのコルチゾール濃度が低かった。
さらに、気質スコアの高い犬ではセロトニン濃度が有意に高く、テスト刺激に対するコルチゾールの急騰も抑制されていた。この知見は、「しつけの良い犬は幸せである可能性が高い」という一般的な直感を生理的に裏付けるものだ。飼い主やブリーダーにとっては、正のトレーニングとストレス管理が犬のウェルフェアに生化学レベルで反映されることを示す重要なエビデンスとなる。
📖 PLoS One, 2026, 21(2): e0337781
🔗 https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371%2Fjournal.pone.0337781
🧠 行動・認知科学
2. 🔬 獣医学・栄養学
犬と猫の虹彩隅角(毛様体裂)を超音波生体顕微鏡で比較——犬が緑内障になりやすい解剖学的理由を解明(BMC Vet Res, 2025)
📅 2025.03.15
韓国・全北大学校のKim D.らがBMC Veterinary Researchに発表した後ろ向き研究で、超音波生体顕微鏡(UBM)を用いて正常眼を持つ犬16頭・猫14頭の前眼部を比較計測した。Schwalbe線距離(SLD)、虹彩隅角(ICA)、隅角開口距離(AOD)、毛様体裂の幅・長さ・面積(CCW/CCL/CCA)など9項目のパラメータを精密に測定した結果、犬はいずれの指標でも猫より有意に小さい値を示した。とくに虹彩隅角は犬の方が著しく狭く、毛様体裂も小さいことが明確になった。原発性隅角閉塞緑内障(PACG)が犬に多く猫に少ない理由が、種差としての眼球前眼部の解剖学的形状の違いによって説明できることを示した初の系統的比較研究だ。
緑内障は眼圧上昇により視神経が不可逆的に障害される疾患で、犬では網膜神経節細胞の急速な消失を伴い、発症から数日〜数週で失明に至ることもある。今回の知見は、犬の緑内障スクリーニングをより積極的に行うべき根拠を強化し、UBMによる早期隅角評価の臨床応用を後押しする。特に短頭種・特定犬種(バセット、アメリカン・コッカー、柴犬など遺伝的素因が知られる品種)を飼育する場合は、定期的な眼科検証を受けることを強く推奨する。
📖 BMC Veterinary Research, 2025
🔗 https://link.springer.com/article/10.1186/s12917-025-04648-5
🔬 獣医学・栄養学
3. 🔬 獣医学・栄養学
猫の性格が疼痛スコアに影響——FGS・CMPS-Felineの2スケールで検証、「シャイな猫」は痛みがなくても高スコアになりうる(JFMS, 2025)
📅 2025.05.20
ルーマニア・農業獣医学大学のAna Cadariu氏らがJournal of Feline Medicine and Surgery(JFMS)に発表した研究で、猫の性格(フレンドリー/シャイ)がFeline Grimace Scale(FGS)とGlasgow Feline Composite Measure Pain Scale(CMPS-Feline)という2種類の行動ベース疼痛スケールのスコアに与える影響が検証された。外科処置を受けた猫および健常な猫を対象に、標準化されたプロトコルで両スケールによる疼痛評価を実施し、事前に測定した性格スコアとの相関を分析した。その結果、「シャイな性格」と評価された猫は実際の疼痛状態に関わらず両スケールで高いスコアを記録する傾向が確認され、性格が疼痛評価の交絡因子となりうることが示された。
この知見は臨床獣医師にとって非常に実践的な意味を持つ。FGSとCMPS-Felineは現在世界標準として幅く使用されている猫の疼痛評価ツールだが、臆病・シャイな猫では偽陽性(実際には痛みがないのに「痛がっている」と判定)が生じやすい可能性がある。逆に言えば、シャイな猫の術後疼痛管理では「スコアが低いから大丈夫」という判断が過少評価につながるリスクもある。猫の個性・気質を踏まえた総合的な疼痛アセスメントが重要であることを再確認させる研究だ。
📖 Journal of Feline Medicine and Surgery, 2025
🔗 https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/1098612X251349718
🔬 獣医学・栄養学
4. 🧠 行動・認知科学
猫は「見えなくなった物体」を理解している——違反期待パラダイムで対象物恒常性(ステージ4・6)を検証(PLoS One, 2025)
📅 2025.07.09
サセックス大学のForman J.らがPLoS Oneに発表した研究で、家猫18頭を対象に対象物恒常性(object permanence)のステージ4とステージ6をそれぞれ違反期待パラダイム(violation-of-expectancy)で検証した。「物体が見えなくなった後も存在し続ける」という認識(対象物恒常性)はピアジェの認知発達理論の感覚運動期の核心概念であり、ステージ5は連続的な可視的移動を理解できるレベル、ステージ6は見えない状態での移動を推論できるより高次なレベルだ。実験では飼い主と見知らぬ人の両方がテスターを動め、人物の親密度が試験への関与度に影響するかも同時に検討された。猫が予期しない場所に物体が現れたとき(違反試行)に長く凝視することでステージ4・6の理解を示した。
この研究は「猫はけだるいだけで賢くない」という偏見を覆す科学的証拠の一つとなる。猫が飼い主との親しみやすさによって実験への参加度が変化した点も興味深く、室内での実験なら猫が本来持つ認知能力を引き出しやすいことを示唆している。対象物恒常性の理解はおもちゃや隠れた獲物を「知的に追いかける」行動の認知的基盤でもあり、猫に知的なおもちゃを与える意義を科学的に支持する知見だ。
📖 PLoS One, 2025, 20(7): e0312225
🔗 https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371%2Fjournal.pone.0312225
🧠 行動・認知科学
5. 🔬 獣医学・栄養学
米国プライマリケア施設の特発性てんかん犬1,900頭超を分析——フェノバルビタール・レベチラセタムが主流、治療ガイドラインの普及を確認(Frontiers in Veterinary Science, 2026)
📅 2026.02.14
バンフィールド動物病院ネットワーク(米国42州・DC・プエルトリコ、1,000以上の施設)の電子カルテデータ(2020〜2023年)を使った大規模後ろ向き研究が、Frontiers in Veterinary Scienceに掲載された。初回てんかん発作が確認された生後6か月〜6歳・一般身体検査および神経学的検査が正常な犬を特発性てんかん(IE)と定義し、疫学的特性と抗てんかん薬(ASD)処方傾向を分析した。フェノバルビタール(34.9%)とレベチラセタム(31.3%)が最も頻繁に処方されており、多くの症例でACVIMコンセンサス声明(2015年)の推奨に沿った医療が提供されていることが確認された。大型犬や特定の純血種にてんかんリスクが高い傾向も示された。
このような大規模プライマリケアデータは、大学病院等の二次診療施設のデータとは異なる「日常的なかかりつけ医の現場」を反映している点に意義がある。プライマリケアレベルでのてんかん管理の質を可視化し、未解決の課題(薬物抵抗性てんかんへの対応、モニタリングの頻度など)を特定する基盤となる。犬が繰り返しけいれん発作を起こす場合は早めに獣医師を受診し、神経科専門医への紹介も視野に入れた包括的な管理を検討してほしい。
📖 Frontiers in Veterinary Science, 2026, Vol.13
🔗 https://www.frontiersin.org/journals/veterinary-science/articles/10.3389/fvets.2026.1723038/full
🔬 獣医学・栄養学
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