🎗️ 犬猫 腫瘍ニュース — 2026.05.05
犬猫の腫瘍・がん関連ニュース&論文 計7件
🎗️ 腫瘍・がん関連ニュース — 2026.05.05
本日 7件
1. 🎗️ ガイドライン
AAHA、待望の「2026年版オンコロジーガイドライン(犬猫)」を1月2日に正式公開——一次診療のためのがん診断・治療プロトコルが14年ぶりに刷新
📅 2026.01.02
米国動物病院協会(AAHA)は、長らく待たれていた「2026年版犬猫腫瘍診療ガイドライン」を2026年1月2日に正式公開した。これは2010年AAFPと共同のがん診療指針以来、14年ぶりに本格刷新されたもので、一次診療のジェネラリスト獣医師でも実装できることを最大の目標とする。診断(細胞診・生検手技・画像診断・ステージング)、治療(化学療法・放射線療法・免疫療法・標的療法)、支持療法(疼痛管理・栄養・QOL評価)、化学療法スタッフ・飼い主の安全管理、緩和ケア・終末期医療まで包括的にカバー。
特筆すべきは、過去5年で承認された新薬(Stelfonta、Tanovea、Laverdia-CA1、Gilvetmab、Canalevia-CA1、Numelvi、Befrena等)の位置付けが整理された点と、「化学療法室での暴露・廃棄物管理」が独立章として設けられた点。日本獣医がん学会はAAHAガイドラインを直接採用しないが、JCVIM 2026大会で「日本版ガイドラインへの応用」を議論する動きがあり、国内の腫瘍診療標準化にも影響を与える可能性が高い。一般飼い主にも公開されており、愛犬・愛猫ががんと診断された時に「自分の獣医師の判断は標準的か?」を確認するセカンドオピニオンの基準として活用できる。
🔗 https://www.aaha.org/resources/2026-aaha-oncology-guidelines-for-dogs-and-cats/
🎗️ 医療・がん診療ガイドライン
2. 🎗️ 新薬・比較腫瘍学
UC Davis、猫の口腔扁平上皮癌(HNSCC)に新規STAT3阻害薬で35%の制御率——ヒト頭頸部癌への展開も視野に開発加速(Cancer Cell 2026)
📅 2026.03.18
UC Davis獣医学部とUC Davis Comprehensive Cancer Centerの共同研究チームが、Cancer Cell 2026年3月号に発表した画期的研究。猫の口腔扁平上皮癌(feline oral squamous cell carcinoma, OSCC)は最も悪性度が高い猫の腫瘍の一つで、診断後の生存期間中央値はわずか2〜3ヶ月——手術・化学療法・放射線療法を駆使しても延命効果が限定的だ。研究チームは新規クラスの分子標的薬(STAT3経路阻害薬)を開発し、自然発症OSCC猫を対象とした臨床試験で35%の症例で病勢制御を達成。副作用は最小限だった。
特筆すべきは、本剤がSTAT3活性を抑えるだけでなく、抗腫瘍免疫応答に関わるタンパク質を逆に上昇させる「免疫転換」効果を持つこと。これは「標的療法と免疫療法のクロスオーバー」を実現する次世代設計の好例だ。研究チームは小規模バイオテックと提携し、犬・猫・ヒトの並行開発を進めている。猫の口腔がんは早期発見が極めて難しく、口臭・流涎・摂食拒否の段階で既に進行していることが多い。新規モダリティの登場は飼い主にとって大きな希望。
🔗 https://www.ucdavis.edu/health/news/new-cancer-drug-could-help-cats-and-people
🎗️ 医療・がん新薬
3. 🎗️ 免疫療法・基礎研究
UC Davis、犬マスト細胞腫(MCT)にKIT標的モノクローナル抗体を開発中——化学療法の代替候補、Morris Animal Foundation 2026年新規助成
📅 2026.04.10
Morris Animal Foundationは2026年4月、UC Davis獣医学部のMarietta Ravesloot-Chavez研究員に「犬MCTのKIT標的モノクローナル抗体療法開発」研究助成を授与したと発表。マスト細胞腫は犬の皮膚腫瘍で最も多く、ボクサー、パグ、ブルドッグ、ボストンテリアなど高リスク犬種が多い。多くは外科切除単独で予後良好だが、グレードII〜IIIの一部は転移性で化学療法を要し、副作用が問題となる。
研究は、MCT細胞表面に高発現する「KIT」(CD117)受容体を標的とする抗体を設計し、健常組織を温存しつつ腫瘍細胞のみを排除する精密免疫療法を目指す。既存のチロシンキナーゼ阻害薬(Palladia/toceranib、Kinavet)はKITを抑えるが、汎用的な細胞内シグナル阻害のため副作用も多い。一方、抗体療法は分子表面に直接作用するため副作用が少ないと期待される。ヒトのマスト細胞増殖症(Systemic Mastocytosis)にも応用可能性があり、犬→ヒトへの「リバース・トランスレーション」として注目度が高い。
🔗 https://www.morrisanimalfoundation.org/study/canine-mast-cell-tumor-monoclonal-antibody-therapy-2026
🎗️ 研究・がん免疫療法
4. 🎗️ 放射線療法・併用療法
イリノイ大、猫の口腔扁平上皮癌(OSCC)に放射線+分子標的薬の併用療法——安全性・忍容性を確認、腫瘍縮小も観察
📅 2026.03.25
イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校獣医学部のがん診療チームが、猫の口腔扁平上皮癌(OSCC)に対する「放射線療法+分子標的薬」併用プロトコルの安全性・忍容性試験を2026年に発表。OSCCは前述の通り猫の最悪性腫瘍の一つで、放射線単独でも効果が限定的だった。標的薬を併用するアプローチは「放射線で腫瘍を破壊し、薬剤で生き残った腫瘍細胞を叩く」相乗効果を狙う。
予備的結果では、副作用(放射線皮膚炎・口内炎の悪化、骨髄抑制)はプロトコルで管理可能な範囲内に収まり、複数症例で腫瘍サイズの縮小が観察された。プロトコルは小型動物の口腔がんに最適化された分割照射スケジュールに、選択された経口分子標的薬を組み合わせるもの。フェーズII試験の結果が待たれるが、これまで「治療諦めるしかない」と言われてきた進行猫OSCCに対して、新たな治療オプションを提示する研究として注目される。日本国内でも放射線腫瘍科を持つ二次診療施設での適用が将来的に検討される可能性がある。
🔗 https://vetmed.illinois.edu/2026/03/30/cancer-treatment-for-pets-and-people/
🎗️ 放射線療法・併用療法
5. 🎗️ 標的放射性医薬品(TRT)
UWカーボーン癌センター、犬の末梢T細胞リンパ腫(PTCL)に「⁹⁰Y-NM600」標的放射性医薬品療法の臨床試験——比較腫瘍学から人類初の癌種へ
📅 2026.03.15
ウィスコンシン大学獣医学部とUW Carbone Comprehensive Cancer Centerが共同で、犬の末梢T細胞リンパ腫(PTCL)に対する標的放射性医薬品療法(targeted radiopharmaceutical therapy, TRT)の臨床試験を2026年3月から本格運営。使用するのは「⁹⁰Y-NM600」というβ線放射性同位体イットリウム-90を、腫瘍細胞膜に選択的に集積する分子NM600で標識した治療薬。腫瘍内部に放射線を直接送り込み、健常組織への被爆を最小化する。
PTCLは犬リンパ腫の20〜30%を占め、B細胞型と比べて化学療法(CHOPプロトコル)に対する反応が悪く、寛解期間も短い「難治型」として知られる。本試験では「⁹⁰Y-NM600」の安全性、有効性、最適用量を犬で評価し、データをヒト悪性リンパ腫の臨床応用にフィードバックする「ベッドサイドからベンチへ」の比較腫瘍学パイプラインを構築。日本でもCHOP抵抗性のT細胞リンパ腫犬は珍しくないため、将来的な国際共同試験への期待が高まる。
🔗 https://uwveterinarycare.wisc.edu/veterinary-clinical-studies/oncology/
🎗️ 放射線療法・新治療
6. 🎗️ 骨肉腫・バイオマーカー
犬骨肉腫の「過剰発現タンパク質」を網羅同定——ヒト骨肉腫と共通する新規治療標的・診断バイオマーカー候補(MDPI Cancers 2026年1月)
📅 2026.01.14
オーストラリアのマードック大学とアデレード大学の共同チームが、MDPI Cancers誌2026年1月14日号(vol. 18, issue 2, art. 262)に発表した重要研究。犬の付属器骨肉腫(OSA)組織と正常骨組織から発現遺伝子を比較解析し、過剰発現する遺伝子から翻訳されるタンパク質を網羅的に同定した。OSAはゴールデンレトリバー、グレートデーン、アイリッシュウルフハウンド、ロットワイラーなど大型犬に多い「予後不良がん」で、断脚+化学療法(カルボプラチン or ドキソルビシン)が標準だが、診断時に既に微小転移があるため5年生存率は10%以下と低い。
新規候補の中には、ヒト骨肉腫でも重要視されている分子標的(例えばRUNX2、MMP9、IGF1R関連)と並んで、犬で初めて報告される候補も含まれていた。これらはタンパク質レベルでの発現量から「分子標的薬による狙い撃ち」「血中・尿中バイオマーカーとしての早期診断」「腫瘍特異的免疫療法の抗原」と多面的に活用が見込まれる。本研究はOS Therapies社のOST-HER2ワクチンや、開発中のEGFR/HER2 Yale ワクチンと並走する形で、犬OSA治療の選択肢を拡張する基盤データを提供。
🔗 https://www.mdpi.com/2072-6694/18/2/262
🎗️ 研究・骨肉腫
7. 🎗️ 血管肉腫・遺伝子標的
UF、犬血管肉腫の「PIK3CA変異」が免疫系を撹乱する仕組みを解明——血管新生だけでなく免疫操作も担う新ターゲット
📅 2026.01.06
フロリダ大学獣医学部とUF Health Cancer Centerの共同チームが、犬の血管肉腫(hemangiosarcoma, HSA)の悪性度を高める分子メカニズムを解明した研究を、Cancer Gene Therapy誌に発表(myvetcandyによる解説記事は2026年1月6日付)。HSAは脾臓・心臓・肝臓・皮下に発生する高悪性度腫瘍で、ゴールデンレトリバー、ジャーマンシェパード、バーニーズマウンテンドッグの「死因第1位」とも言われる。発症するとほぼ確実に転移しており、診断後の中央生存期間は化学療法併用でも6ヶ月程度と極めて短い。
研究のキー発見は「PIK3CA」遺伝子の変異が、単に腫瘍の血管新生を促進するだけでなく、周囲の免疫細胞の挙動を撹乱し「腫瘍に有利な免疫微小環境(TME)」を形成すること。腫瘍細胞は近傍の健康な細胞を巻き込んで腫瘍に養分を送る血管を作らせ、さらに「がん促進性免疫細胞」の生成を誘導する——いわば腫瘍が免疫系を味方に変えてしまう仕組みだ。PIK3CA阻害薬(ヒトでは乳がん治療に使われるalpelisibなど)の犬HSAへの転用試験が次の課題。ヒトの血管肉腫も同様にPIK3CA変異と関連するため、犬での成果は人類のがん治療にも還元される比較腫瘍学の好例。
🎗️ 研究・血管肉腫
🎗️ 犬猫腫瘍ニュース | all-i-need-are-dogs.blog

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