📚 犬猫 研究論文 — 2026.05.26
注目論文 3件
1. 🧬 獣医学・栄養学
犬の外来診療で「いつ抗菌薬が処方されるか」を9,685頭・約2万件のカルテで解析——抗菌薬適正使用(スチュワードシップ)の現状と課題(JVIM 2026年)
📅 2026.03
米タフツ大学カミングス獣医学部のKristen Thaneらは、大学附属動物病院の電子カルテを用い、2022年に外来を受診した犬9,685頭・延べ19,597件の来院データを解析し、どのような状況で抗菌薬(抗生物質)が処方されるかを後ろ向きに調べました。獣医療における抗菌薬の適正使用(アンチマイクロビアル・スチュワードシップ)は、人医療と同じく薬剤耐性菌の出現を抑えるうえで世界的な課題となっています。本研究は、診療科・主訴・診断名などのどの要因が処方と関連するかを定量化し、過剰処方が起こりやすい場面を可視化することを目的としています。こうした実診療データに基づく解析は、現場の処方判断を見直すための重要な土台になります。
抗菌薬は細菌感染症には不可欠ですが、ウイルス性疾患や自己限定的な症状にまで「念のため」使われると、効きにくい耐性菌を増やし、いざという時に効果が下がる原因になります。飼い主としては、「抗生物質を出してほしい」と求めるのではなく、本当に必要かを獣医師と確認し、処方されたら指示どおりの期間・用量を最後まで守る(途中でやめない・余りを自己判断で使わない)ことが、愛犬とすべての動物・人を守る適正使用につながります。下痢や軽い皮膚トラブルなど、必ずしも抗菌薬を要さないケースもあるため、検査や経過観察の選択肢も含めてかかりつけ医と相談しましょう。
📖 Journal of Veterinary Internal Medicine, 2026, 40(2)
🔗 https://academic.oup.com/jvim/article/40/2/aalag043/8537379
🧬 獣医学・栄養学
2. 🧬 獣医学・栄養学
猫の慢性歯肉口内炎(FCGS)に「抗菌薬+抗ウイルス薬」併用——抜歯なしでも食欲・体重・毛づくろいが有意に改善(Veterinary Sciences 2026年4月)
📅 2026.04
猫の慢性歯肉口内炎(FCGS)は、口の中に激しい炎症と痛みが生じる難治性の疾患で、よだれ・口臭・食欲不振・体重減少・毛づくろいの低下などを招き、生活の質を大きく損ないます。標準的な治療は全顎または広範囲の抜歯ですが、外科処置の負担や、抜歯後も改善しない症例があることが課題でした。2026年4月にVeterinary Sciences(MDPI)に掲載された研究は、抗菌薬モキシフロキサシンと抗ウイルス薬モルヌピラビルの併用療法を検証。体重・食欲・活動性・毛づくろい・流涎(よだれ)・粘膜の発赤といった指標が、併用投与で統計的に有意に改善し、しかもその効果は「抜歯した場合」と「抜歯しなかった場合」で同等だったと報告しました。
これは、FCGSの治療で外科的抜歯に代わりうる内科的アプローチの可能性を示す注目すべき結果です。FCGSの背景にはカリシウイルスなどの感染や免疫の関与が指摘されており、抗菌・抗ウイルスの二方向から攻めるという発想は理にかなっています。ただし症例数や追跡期間には限界があり、すべての猫に抜歯が不要になると結論づけるのは時期尚早です。口の痛みは猫にとって大きな苦痛なので、よだれ・口臭・食べづらそうな様子に気づいたら早めに受診し、治療方針(抜歯・内科治療の組み合わせ)は歯科に強い獣医師とよく相談してください。
📖 Veterinary Sciences (MDPI), 2026, 13(4):363
🔗 https://www.mdpi.com/2306-7381/13/4/363
🧬 獣医学・栄養学
3. 🧬 行動・認知科学
イヌの脳は「約5,000年前」から縮み始めた——古代〜現代のイヌ科頭骨CTを比較、脳の小型化と家畜化の関係を解明(Royal Society Open Science 2026年)
📅 2026.04
イヌがオオカミより小さな脳を持つことは古くから知られていますが、「いつ」「どのように」脳が小さくなったのかは謎でした。研究チームは、3万5,000年前〜5,000年前の先史時代のオオカミ・イヌ22頭の頭骨と、現代のオオカミ59頭・イヌ104頭のCTスキャンを比較。その結果、イヌの脳サイズの縮小は、少なくとも西ヨーロッパの新石器時代後期(約5,000年前)には確立していたことが分かりました(Royal Society Open Science、2026年)。現代のイヌの脳は平均してオオカミより約24%小さいとされ、家畜化の過程で脳が小型化していった時期に具体的な手がかりを与える成果です。
重要なのは、「脳が小さい=イヌが愚かになった」わけではないという点です。脳サイズの縮小は、自然界の他の家畜化された動物でも見られる現象で、攻撃性の低下やヒトとの共生に適応した結果だと考えられています。むしろイヌは、ヒトの指さしや表情を読むといった、オオカミにはない高度な社会的認知能力を発達させてきました。脳の大きさだけで知能は測れないということを、進化のスケールで思い出させてくれる研究です。愛犬の賢さは脳の大小ではなく、私たちとの関わりの中で育まれるもの——そんな視点で日々のふれあいを楽しみたいですね。
📖 Royal Society Open Science, 2026
🔗 https://phys.org/news/2026-04-tail-dog-brain-reveals-began.html
🧬 行動・認知科学
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