📚 犬猫 研究論文 — 2026.07.01
注目論文 3件
1. 🩺 獣医学・栄養学
犬の腸内細菌叢の全体像を解明——982の新規菌株を発見した「ウォルサム・カタログ」
📅 2026.01.22
英ウォルサム・ペットケア科学研究所(マース・ペットケア傘下)の研究チームが、健康な犬107頭(米国・欧州、ケンネル飼育と家庭飼育の両方)の糞便サンプルをメタゲノム解析し、これまでで最も包括的な犬の腸内細菌叢カタログを構築した。5,753のゲノムを再構成して1,031菌株に整理し、そのうち982菌株が犬では未記載、89種・10属がまったくの新種・新属だった。これにより、従来は約25%にとどまっていた菌の同定率が95%へと大きく向上した。
最も多く存在していたのは、植物繊維を発酵させる「プレボテラ・コプリ(Prevotella copri)」(存在比8.1%)で、これはヒトの腸内で最優占する菌と同じだった。犬の腸内細菌が短鎖脂肪酸の産生や食物繊維の分解に大きく関わることを裏づける結果であり、犬は肉食専門ではなく植物性栄養も効率よく利用できることを示している。今後のプロバイオティクス・プレバイオティクス開発や、加齢・疾患・食事介入の研究の土台となる重要な基礎データだ。
📖 Microbiome, 2026
🔗 https://doi.org/10.1186/s40168-025-02265-w
🩺 獣医学・栄養学
2. 🩺 獣医学・栄養学
猫の慢性腎臓病に対する「AIM(マクロファージアポトーシス抑制因子)」の臨床的効果
📅 2026.02.01
東京の研究グループ(手塚ら、宮崎徹氏ら)が、猫の慢性腎臓病(CKD)に対するAIM(apoptosis inhibitor of macrophage:マクロファージのアポトーシス阻害因子)の臨床的効果を報告した。AIMは血中に存在するタンパク質で、腎尿細管に溜まった死細胞の残骸(デブリ)に目印を付けて除去を促す「掃除役」として働く。猫ではAIMがIgMと強固に結合してしまい腎臓内で十分に機能しないため、CKDが進行しやすいと考えられている。本研究では、組換えAIMの静脈内投与が進行したCKDの猫の生存期間を延長し、腎バイオマーカーの悪化を抑えることが示された。
猫のCKDは高齢猫で非常に多く(15歳以上では最大8割という報告もある)、これまで根本治療がなかった。AIMはその進行そのものに介入しうる新しいアプローチとして期待が大きい。実際、2026年4月には東京のバイオ企業がこのAIM製剤について農林水産省へ動物用医薬品の承認申請を行ったと報じられており、早ければ2027年春の実用化が見込まれている。高齢猫を飼う家庭にとって、定期的な腎機能チェックの重要性とあわせて注目しておきたい研究だ。
📖 The Veterinary Journal, 2026, p.106545
🔗 https://doi.org/10.1016/j.tvjl.2026.106545
🩺 獣医学・栄養学
3. 🧠 行動・認知科学
犬は「飼い主」と「同居犬」が同時にいると、飼い主のそばを選ぶ
📅 2026.04.13
米デューク大学などのチームが、成犬31頭を対象に「2択の社会的選好テスト」を行った。広いアリーナの中で犬を自由に動き回らせ、飼い主・同居犬・おもちゃ・食べ物という馴染みのある対象を2つずつ同時に提示し、それぞれにどれだけ近くで過ごすかを自動追跡で計測した。その結果、飼い主と同居犬を直接競合させた条件では、犬は同居犬より飼い主のそばで過ごす時間が明らかに長かった。一方、それぞれを単独で評価すると、犬は飼い主にも同居犬にもおもちゃより近づいたが、食べ物よりは近づかなかった。
つまり犬の社会的な「近づきたさ」は、固定的な順位で決まっているのではなく、その場にどんな選択肢が同時にあるかという文脈に強く左右されることが分かった。「うちの子は私より犬同士のほうが好きかも」と感じる飼い主もいるかもしれないが、飼い主と他の犬がそろっている場面では、犬はちゃんと飼い主を優先して選ぶ傾向がある。単独提示だけでは見えてこない、犬の柔軟な社会的判断の一端を示した研究だ。
📖 Animal Cognition, 2026, Vol.29, Article 43
🔗 https://doi.org/10.1007/s10071-026-02060-6
🧠 行動・認知科学
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