🎗️ 犬猫 腫瘍ニュース — 2026.07.29
犬猫の腫瘍・がん関連ニュース&論文 計7件
🎗️ 腫瘍・がん関連ニュース — 2026.07.29
本日 7件
1. 🎗️ 医療・血液がん治療
犬の「末梢性T細胞リンパ腫」に標的放射性医薬品──⁹⁰Y-NM600がん細胞をピンポイント照射する新戦略
📅 2026
米ウィスコンシン大学は、同大カーボンがんセンターと連携し、犬の「末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)」に対する新しい治療法の臨床試験を進めている。用いるのは⁹⁰Y-NM600と呼ばれる「標的放射性医薬品」で、がん細胞に集まりやすい性質を持つ分子に放射性同位体(イットリウム90)を結合させ、体の中からがん細胞をピンポイントで照射する仕組みだ。外部から当てる放射線治療と違い、全身に散らばったがん細胞にも届く可能性がある。
末梢性T細胞リンパ腫は、犬のリンパ腫の中でも標準的な化学療法が効きにくく予後が厳しいタイプとして知られる。体内から狙い撃ちする放射性医薬品は、正常組織へのダメージを抑えつつ、これまで手を出しにくかった微小な転移巣にもアプローチできると期待されている。この治療はヒトの難治性リンパ腫の研究とも共通点が多く、まさに「比較腫瘍学」の一例だ。愛犬がリンパ腫と診断された場合、標準治療に加えて臨床試験という選択肢があることも、主治医に相談してみる価値がある。
🔗 https://uwveterinarycare.wisc.edu/veterinary-clinical-studies/oncology/
2. 🎗️ 研究・個別化治療
【日本】犬の前立腺がんは「BRAF変異」が多い──ヒトのがんで使う分子標的薬の応用へ、東大が治療開発
📅 2026
東京大学の獣医外科学研究室は、犬の前立腺がんに対する「BRAF/MEK阻害療法」の開発を進めている。犬の尿路上皮がん(膀胱がん)や前立腺がんの多くでは、細胞増殖のスイッチを担うBRAF遺伝子の特定部位(コドン595)に高い確率で点突然変異(V595E)が見つかっており、この変異は正常な細胞には見られない。つまり、この変異こそが”がんの弱点”になりうるという発想だ。
BRAF変異はヒトの悪性黒色腫(メラノーマ)などでも重要な治療標的で、すでにBRAF阻害薬やMEK阻害薬といった分子標的薬が使われている。これらの薬を犬の前立腺がんに応用できれば、副作用の大きい従来の抗がん剤に頼らない、より的を絞った治療につながる可能性がある。犬の前立腺がんは進行が速く治療が難しいがんの一つだけに、日本発の個別化医療の研究が待たれる。愛犬に頻尿や排尿困難などの症状があれば、早めに受診してほしい。
🔗 https://www.vm.a.u-tokyo.ac.jp/geka/Contents.html
3. 🎗️ 医療・新治療
犬の甲状腺腫瘍を「切らずに壊す」ヒストトリプシー──焦点式超音波が免疫まで呼び覚ます
📅 2026.05
米バージニア工科大学の研究チームは、犬の甲状腺腫瘍を切開も放射線も使わずに治療する「ヒストトリプシー」の臨床研究を進めている。ヒストトリプシーは、焦点を絞った超音波の力で組織内に微小な泡(キャビテーション)を発生させ、その物理的な力だけで腫瘍を精密に破壊する非侵襲・非加熱・非電離の新技術だ。メスを入れず、熱で焼くのでもなく、狙った場所の細胞を機械的に砕く点が特徴である。
さらに近年の研究では、ヒストトリプシーで壊されたがん細胞のかけらが免疫系を刺激し、体自身のがんに対する防御反応を呼び覚ます可能性が注目されている。同大は2020年からNIH(米国立衛生研究所)や焦点式超音波財団などの支援を受けて犬の臨床試験を続けており、甲状腺のほか肝臓・骨・脳の腫瘍にも応用研究を広げている。体への負担が小さい治療は、高齢の犬や手術リスクの高い症例にとって大きな希望になりうる。
🔗 https://news.vt.edu/articles/2026/05/vetmed-research-histotripsy.html
4. 🐱 猫の腫瘍・比較腫瘍学
猫の扁平上皮癌に「STAT3阻害薬」──35%で病勢を制御、ヒトの頭頸部がんにも道
📅 2026
米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)とデービス校(UC Davis)の研究チームは、飼い猫を対象にした新しい抗がん薬の初の臨床試験を実施し、その結果を学術誌Cancer Cellに発表した。対象は、猫の口や皮膚にできる悪性度の高い「扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)」。がん細胞の増殖に関わるタンパク質「STAT3」を阻害する新薬を投与したところ、治療を受けた猫の35%で病気の進行が抑えられ、しかも副作用はごく軽かった。
この研究を率いたUCSFのジェニファー・グランディス博士らは、猫の扁平上皮癌がヒトの「頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)」とよく似ていることに着目した。飼い猫での成果は、そのままヒトの難治がんの新薬開発にも道を開く「比較腫瘍学」の好例だ。猫の口のがんは進行が速く、これまで有効な内科治療が乏しかっただけに、副作用の少ない新しい選択肢は朗報といえる。愛猫の口臭・よだれ・食べにくさなどが続く場合は、早めに口の中を診てもらってほしい。
🔗 https://www.vetmed.ucdavis.edu/news/new-cancer-drug-could-help-cats-and-people
5. 🎗️ 診断・液体生検
犬の悪性黒色腫を「採血」で追う──血中を漂うがんDNA(ctDNA)で再発をいち早く察知
📅 2026
日本の研究者らが学術誌Journal of Veterinary Medical Science(JVMS)に2026年に発表した報告は、犬の悪性黒色腫(メラノーマ)2症例について、血液中を漂う「循環腫瘍DNA(ctDNA)」を使って個別にモニタリングした試みだ。がん細胞は壊れる際にわずかなDNA断片を血液中に放出しており、この”がん由来のDNA”を高感度に検出することで、画像やしこりに現れる前の段階で、治療の効き目や再発の兆しをとらえられる可能性がある。
悪性黒色腫は犬の口の中などに多い悪性度の高いがんで、目に見えない微小な転移や再発の早期発見が課題だった。採血だけで繰り返し調べられる液体生検(リキッドバイオプシー)は、麻酔や生検の負担なく経過を追える点で、犬にもやさしい。まだ症例数は少なく研究段階だが、一頭ごとの状態に合わせた「個別化されたがん管理」への一歩といえる。愛犬ががんの治療中なら、こうした新しい検査の登場も主治医と情報共有しておきたい。
🔗 https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jvms/-char/ja
6. 🎗️ 医療・血管肉腫
血管肉腫に「細胞外小胞」で抗がん剤を直接届ける──体の”運び屋”を使う新しい薬剤送達
📅 2026
米モリス動物財団が支援する研究の一つが、犬の「血管肉腫(けっかんにくしゅ)」に対する新しい薬剤送達(ドラッグデリバリー)の開発だ。細胞が自然に分泌する微小なカプセル「細胞外小胞(EV)」を”運び屋”として使い、抗がん剤を血管肉腫の細胞へ直接届ける仕組みを検証している。全身にばらまく従来の化学療法に比べ、がん細胞にピンポイントで薬を集められれば、効果を高めつつ副作用を減らせると期待される。
血管肉腫は脾臓や心臓などにできやすく、発見時にはすでに転移していることが多い、犬のがんの中でもとくに手ごわい相手だ。ゴールデン・レトリーバーなど好発犬種も知られている。体自身の”配達システム”を利用するEV技術は、この難治がんに新たな突破口をもたらすかもしれない。これらのプロジェクトは2026年に成果がまとまる見込みで、今後の続報が注目される。血管肉腫は初期症状が乏しいため、シニア期の健康診断で脾臓などをチェックしておくことも大切だ。
7. 🎗️ 研究・がんワクチン
犬の脳腫瘍に「mRNAワクチン」──10頭で急速な免疫活性化を確認、生存期間の延長に期待
📅 2026
犬の脳腫瘍(神経膠腫=グリオーマ)に対し、「mRNA(メッセンジャーRNA)」を使ったがんワクチンの可能性を探る研究が発表された。組織学的に神経膠腫と確認された犬10頭を対象に、免疫を刺激するよう設計されたRNA脂質粒子(RNAリポプレックス)を投与したところ、ワクチンの製造・投与はおおむね良好に耐えられ、体内で急速な免疫の活性化が引き起こされた。ワクチンを3回または4回受けた犬の生存期間中央値は、それぞれ123日・155日だった。
新型コロナのワクチンで一躍有名になったmRNA技術を、がん治療に応用する動きが人でも犬でも加速している。脳腫瘍は手術や放射線が届きにくく治療が難しいがんの代表格で、免疫の力を借りる新戦略は大きな意味を持つ。犬での知見は、同じく治療の難しいヒトの脳腫瘍(膠芽腫など)の研究にも直結する。まだ少数例の初期段階だが、”体の免疫でがんに立ち向かう”アプローチの広がりを示す一例だ。
🔗 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41218853/
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