📚 犬猫 研究論文 — 2026.08.31
注目論文 3件
1. 🏥 獣医学・外科
【日本】「念のための抗菌薬」は24時間でやめていい——麻布大が犬猫291例で手術部位感染を検証
📅 2026.06
薬剤耐性菌の問題が深刻化するなか、獣医外科でも抗菌薬の「なんとなくの継続投与」が見直されている。麻布大学附属動物病院のチームは、清潔創・準清潔創に分類される軟部組織外科手術(避妊去勢や腫瘤切除など)を受け、術後24時間以内に予防的抗菌薬を終了した犬猫291例を対象に、手術部位感染(SSI)の発生率とリスク因子を調査した。その結果、SSIの発生は20例(6.9%)で、これは従来の報告と同水準。リスク因子として特定されたのは抗菌薬の期間ではなく、麻酔時間の長さ(P=0.002)と麻酔中の低血圧(P=0.010)だった。
つまり、清潔創・準清潔創の軟部組織手術では「術後24時間で抗菌薬を切っても感染は増えない」ことが日本の臨床データで示された形だ。抗菌薬の長期投与は薬剤耐性菌を生み、それは犬猫だけでなく同居する人間の健康にも跳ね返る(ワンヘルス)。飼い主としては「抗菌薬が短い=手抜き」ではなくむしろ適正使用の証と理解したい。術後の犬猫では、傷口の赤み・腫れ・分泌物のチェックと、処方された投薬指示を勝手に延長・中断しないことが大切だ。
📖 日本獣医師会雑誌, 2026, 79(6), e47-e51
🔗 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvma/79/6/79_e47/_article/-char/ja/
🏥 獣医学・外科
2. 🏥 獣医学・感染症
「飲むレムデシビル」でも猫のFIPは治せるか——UCデービスの二重盲検試験で非劣性を証明
📅 2026.03.04
かつて不治の病だった猫伝染性腹膜炎(FIP)は、抗ウイルス薬GS-441524の登場で「治せる病気」に変わりつつある。ではその関連薬で、ヒトのコロナ治療薬として知られるレムデシビル(GS-441524のプロドラッグ)を最初から飲み薬として使ったらどうか。UCデービス大学のチームは、非滲出型(ドライタイプ)FIPの猫20頭を経口レムデシビル群(38〜42mg/kg、10頭)と経口GS-441524群(18〜22mg/kg、10頭)に無作為に割り付け、84日間投与する二重盲検・非劣性試験を実施した。16週時点で生存かつ臨床的寛解だったのはレムデシビル群9/10頭(90%)、GS-441524群7/10頭(70%)で、レムデシビルは統計学的な非劣性基準を満たした。治療中の死亡はすべて開始11日以内に起きていた。
この結果は、薬価や入手性、法的アクセスが国や時期で揺れ動くFIP治療において「第一選択にできる飲み薬の選択肢が増えた」ことを意味する。一方で、治療終了1.5〜2年後の長期追跡では、両群あわせて4頭に再発を疑わせる新たな臨床徴候が確認されており、治って終わりではなく長期の経過観察が重要なことも示された。FIPは早期発見・早期治療が命運を分ける。若い猫の続く発熱、食欲低下、体重減少、目の濁りなどに気づいたら、FIP治療の経験がある動物病院に急いで相談してほしい。
📖 Journal of Feline Medicine and Surgery, 2026, 28(4)
🔗 https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/1098612X261433057
🏥 獣医学・感染症
3. 🐾 行動・認知科学
犬の耳は「犬の声」に最強にチューニングされていた——人の声もバイオリンも超える特別扱い
📅 2026.06.19
犬は人と1万年以上暮らしてきた動物であり、人の声は犬にとって極めて重要な音のはず。では犬の脳は「人の声」と「犬の声」をどちらを特別扱いしているのか。ハンガリー・ELTE大学のTamás Faragóらのチームは、馴化—脱馴化パラダイム(同じ音に慣れさせた後、別の音への反応の回復を見る手法)を使い、犬の鳴き声、人の声、チンパンジーの声、バイオリンの音に対する家庭犬の反応を比較した。従来研究は悲鳴のような強い音声に頼りがちだったが、本研究は より中立的な音声で微妙な知覚差を検出できるよう設計されている。結果、犬・人・音楽への反応は偶然を上回った一方、チンパンジーの声への反応は上回らず、そして犬の鳴き声は人の声よりも強い反応を引き起こした。人の声とチンパンジーの声の間には差がなかった。
つまり犬の音声知覚で最優先されるのは「社会的に重要な相手の声」ではなく「同種の声」だという結果だ。家庭犬にとって人の声が大事なのは間違いないが、知覚レベルでは犬同士の声が生物学的に別格の意味を持つらしい。散歩中に遠くの犬の声へ即座に反応するのは、飼い主の呼びかけを無視しているのではなく、そういう耳の仕組みなのだと思えば少し寛容になれるはず。呼び戻しの練習では、犬の声などの競合刺激が少ない環境から段階的に難易度を上げるのが理にかなっている。
📖 Animal Cognition, 2026, 29
🔗 https://link.springer.com/article/10.1007/s10071-026-02074-0
🐾 行動・認知科学
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