📚 犬猫 研究論文 — 2026.09.04
注目論文 3件
1. 🏥 獣医学・栄養学
【日本】「吐かせる薬」はどれが効くのか——日本動物医療センターが犬1,161例で比較、点眼のロピニロールは初回成功率70.7%、トラネキサム酸は25.0%
📅 2026.08.15
犬が異物や中毒物質を飲み込んだときに行う催吐処置について、日本動物医療センター(東京)の有藤翔平氏、竹田祐子氏、瀬尾和馬氏、上野弘道氏らが、2021年から2023年に同センターで催吐処置を受けた犬1,161例のカルテを回顧的に解析した。対象はトラネキサム酸を静脈内投与したTXA群581例と、犬専用の催吐薬として開発されたロピニロール点眼薬を使ったROP群580例で、さらに一方で吐かなかったためにもう一方を追加した併用群74例を別に集計している。初回投与での催吐成功率はTXA群が25.0%だったのに対し、ROP群は70.7%と大きく上回った。有害事象の発生率はTXA群1.9%、ROP群3.1%で、両剤を併用した74例では91.9%が催吐に成功し、有害事象は認められなかった。
日本の動物病院では長年、人の止血薬であるトラネキサム酸を「吐かせる目的」で流用してきたが、この結果は点眼タイプの専用薬のほうが初回で確実に効き、効かなかった場合の追加投与も安全に行えることを示している。著者らは両剤の併用が臨床現場で有用だと結論づけており、催吐の選択肢が広がることで、内視鏡や開腹手術に進む前に処置が完了する犬が増えることが期待される。飼い主にとって重要なのは、誤食に気づいたら自宅で無理に吐かせようとせず、何をいつどれだけ飲み込んだかを把握してすぐ動物病院に連絡することだ。催吐が適さない物質(洗剤や尖った異物など)もあるため、処置の可否は必ず獣医師の判断に委ねたい。
📖 日本獣医師会雑誌, 2026, 79(8)
🔗 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvma/79/8/79_e145/_article/-char/ja
🏥 獣医学・栄養学
2. 🏥 獣医学・栄養学
猫は「食べた直後」にいちばん水を飲む——ドライ・半々・ウェットの3食で42日間、スマート給水器が記録した猫22頭の飲水行動
📅 2026.07.02
カナダ・ゲルフ大学動物生命科学科のライアン・ファン・ディゲレン、ジェネヴィーヴ・ギリーズ、アンナ・ショベラー、ポーリーン・コスマルらは、研究施設で飼育する去勢オス猫12頭と、一般家庭で暮らすオス・メス混合の猫10頭に、カロリーを揃えた「100%ドライ」「ドライ50%+ウェット50%」「100%ウェット」の3種類の食事を2週間ずつ順番に与え、計42日間の飲水量・飲水時間・飲水回数をスマート給水器「Felaqua Connect」で連続記録した。施設猫が自発的に飲んだ水(自由飲水量)はドライで1日98.0mL、半々で53.0mL、ウェットで14.5mLと食事の水分が増えるほど減ったが、食事由来の水分を含めた総水分摂取量は逆に103mL、125mL、155mLと増えた。家庭猫は施設猫よりどの食事でも自由飲水量・総水分摂取量ともに多かったが、食事による変化のパターンは両環境で強く相関していた(自由飲水量r=0.87、総水分摂取量r=0.79)。
食事の種類にかかわらず、猫は空腹時よりも食後2時間の「食べた直後」に多く水を飲んでおり、食事を切り替えた直後の約24時間は一時的に飲水量が増えることも分かった。ドライフード中心の猫は総水分摂取量が最も少なくなるため、尿が濃くなりやすく、尿石症や下部尿路疾患のリスク管理の観点から水分摂取を増やす工夫が求められてきた。この研究は「食後に給水器のそばに水を置く」「ウェットを一部混ぜる」といった飼い主の工夫が理にかなっていることを示すとともに、施設での実験結果が家庭の猫にもおおむね当てはまることを裏づけた。ただし、飲水量が急に増えた場合は腎臓病や糖尿病のサインのこともあるため、食事を変えていないのに飲む量が変わったときは獣医師に相談してほしい。
📖 Journal of Animal Science, 2026, 104:skag201
🔗 https://doi.org/10.1093/jas/skag201
🏥 獣医学・栄養学
3. 🧠 行動・認知科学
「飼い主」と「同居犬」が同時にいたら、犬はどちらに寄っていくか——デューク大が31頭を天井カメラで追跡、飼い主のそばで過ごす時間が39%長かった
📅 2026.04.13
米デューク大学の犬認知センター(Duke Canine Cognition Center)のモーガン・フェランズ、ブライアン・ヘア、ジェナ・マクヘンリーらは、多頭飼育家庭で暮らす1〜15歳(平均5.24歳)の犬31頭(オス16頭、メス15頭)を対象に、2.44m×4.11mのアリーナの対角に2つの「刺激ボックス」を置き、飼い主・同居犬・おもちゃ・ふだんのフードを2つずつ対決させる「二者択一の社会的選好テスト」を行った。犬はアリーナ内を自由に動け、天井の広角カメラと自動追跡ソフトで、どちらのボックスの近くにどれだけ長く滞在したかを連続計測している。飼い主と同居犬を並べた試行では、犬は飼い主側のゾーンに同居犬側より約39%長く滞在し(効果量は大きい)、同じ試行を最後にもう一度繰り返しても45%長かった。飼い主のそばでは尻尾を振っている時間も同居犬のそばより長く、滞在時間で補正しても差は残った。
一方、飼い主や同居犬を「フード」と対決させると、どちらの場合も滞在時間に差はなく、食べ物か社会的相手かの好みは個体ごとに一貫していた。「おもちゃ」との対決では、飼い主は48%、同居犬は18%だけおもちゃより長く滞在し、社会的相手を選ぶ度合いは飼い主のほうが有意に高かった。著者らは、子犬期に報告されてきた「人を犬より優先する傾向」が成犬でも持続することを、自動追跡による客観的な指標で示したとしている。多頭飼いの家庭で「うちの子は犬同士のほうが仲がいい」と感じていても、競合する場面では飼い主が選ばれるという結果は、犬との関係づくりに自信を持たせてくれるデータと言えそうだ。ただし飼い主は全員女性で、攻撃傾向のある犬は除外されているため、結果の一般化には注意が必要だ。
📖 Animal Cognition, 2026, 29(1):43
🔗 https://link.springer.com/article/10.1007/s10071-026-02060-6
🧠 行動・認知科学
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