📚 犬猫 研究論文 — 2026.09.17

A fluffy white dog sleeping peacefully on green grass

📚 犬猫 研究論文 — 2026.09.17

注目論文 3件


1. 🏥 獣医学・栄養学

【日本】手術後の「予防的抗生物質」を24時間以内にやめても手術部位感染は6.9%——麻布大学附属動物病院が犬猫の軟部組織外科291例を調査、リスクを上げたのは投与期間ではなく「麻酔時間の長さ」と「麻酔中の低血圧」だった

📅 2026.06.12

薬剤耐性菌の拡大を防ぐため、ペット医療でも抗菌薬の「慎重使用」が求められているが、手術後にどれくらいの期間、予防的な抗菌薬を続けるべきかについて犬猫のエビデンスは十分ではなかった。麻布大学獣医学部小動物外科学研究室と同大学附属動物病院軟部組織外科・腫瘍外科のチーム(加茂慎太郎氏、高木哲氏ら)は、同病院で清潔創または準清潔創に分類される軟部組織外科手術を受け、術後24時間以内に予防的抗菌薬の投与を終了した犬猫291例を対象に、手術部位感染(SSI)の発生率とリスク因子を後ろ向きに調査した。その結果、SSIは291例中20例(6.9%)で発生し、多変量解析でリスク因子として特定されたのは麻酔時間(P=0.002)と麻酔中の低血圧(P=0.010)だった。抗菌薬の投与期間そのものは感染の増加に関与しておらず、著者らは清潔創・準清潔創の軟部組織外科では術後24時間以内の中止が妥当と結論づけている。

この結果は、人の外科領域で確立している「予防的抗菌薬は術後24時間以内に終了する」という原則が、犬猫でも同様に適用できることを示す国内データとして意義がある。飼い主にとっては「退院後に抗生物質を何日も飲ませなくてよい」ことが多くなるかもしれないが、それは感染リスクを下げる工夫(麻酔時間の短縮、術中の血圧管理)が病院側で徹底されていることが前提だ。抗菌薬を「念のため長めに」と求めるのではなく、術後は傷口の赤み・腫れ・分泌物を毎日観察し、異常があればすぐに受診することが飼い主にできる最善の感染対策となる。処方された薬の期間や中止について疑問があれば、自己判断せず担当獣医師に確認してほしい。

📖 日本獣医師会雑誌, 2026, 79(6), e47-e51

🔗 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvma/79/6/79_e47/_article/-char/ja

🏥 獣医学・栄養学


2. 🏥 獣医学・栄養学

猫の「ウェットタイプFIP」にモルヌピラビルを第一選択で使った42頭、症状と腹水は中央値7日で消え、40週後も血液・腎臓の数値は安定——タイ・マヒドン大が長期安全性を報告、一時的な肝酵素の上昇は7週までに正常化

📅 2026.08.06

猫伝染性腹膜炎(FIP)は猫コロナウイルスが原因の致死性の高い病気で、近年は抗ウイルス薬GS-441524やモルヌピラビルで治療できるようになったが、治療後の長期的な安全性のデータは限られていた。タイ・マヒドン大学獣医学部のプラス・アトーン動物教育病院のチームは、自然発症の滲出型(ウェットタイプ)FIPの猫42頭にモルヌピラビルを第一選択薬として投与し、急性期(0〜12週)の反応と治療後40週までの臨床病理学的な経過を後ろ向きに解析した。投与量の中央値は14.3mg/kgを1日2回、期間は最低84日(12週)。臨床症状と胸水・腹水は中央値7日で消失し、白血球数と好中球数は投与開始1週間以内に有意に改善した(p<0.05)。肝酵素ALTは投与初期に一時的に上昇したが、治療を中断することなく7週までに完全に正常化した。治療終了時(12週)と長期追跡時(40週)のペア解析では、ヘマトクリットやリンパ球などの血液指標、腎機能の指標クレアチニンに有意な変化はなく(p>0.05)、生理的な安定が持続していた。

著者らは「モルヌピラビルは滲出型FIPの第一選択治療として高い効果と安全性を持ち、肝酵素上昇が一過性であることと血液・腎臓の長期的な安定性は、持続的な臨床的治癒の可能性を裏づける」と結論している。かつては「診断=死」だったFIPが、経口薬で治せる病気になりつつあることを改めて示す報告だ。ただし後ろ向き研究で対照群がなく、再発率や死亡数は抄録には示されていない。日本でもモルヌピラビルによるFIP治療を行う病院が増えているが、薬の入手経路や用量、治療費は病院によって大きく異なる。子猫や若い猫に原因不明の発熱、腹部の膨らみ、食欲不振が続く場合はFIPの可能性も念頭に早めに受診し、治療の選択肢と費用について担当獣医師とよく相談してほしい。

📖 Veterinary and Animal Science, 2026, 33, 100805

🔗 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42620651/

🏥 獣医学・栄養学


3. 🧠 行動・認知科学

飼い主に「本気で噛む」犬80頭で無作為化比較試験——フルオキセチン(0.5〜1mg/kg)は知育玩具や飼い主教育だけより攻撃性を大きく減らした。タイ・ワライラック大、副作用は初週の眠気と食欲低下で、玩具を併用した群では少なかった

📅 2026.07.31

飼い主に向けられる攻撃行動は、犬の問題行動の中でも人の安全と犬の福祉の両方を脅かす深刻なもので、放置すれば飼育放棄や安楽死につながりやすい。タイ・ワライラック大学アッカララチャクマリ獣医学部のチームは、咬傷歴を含む中等度〜重度の飼い主向け攻撃行動を示す犬80頭を対象に、無作為化・単盲検の臨床試験を実施した。犬は「フードを入れる知育玩具(TOY)」「抗うつ薬フルオキセチン0.5〜1mg/kg(DRUG)」「薬+玩具(DRUG+TOY)」「対照」の4群に割り付けられ、全群が行動修正の指導を受けた。標準化されたスケールで4週間前後の攻撃スコアを比較したところ、治療前のスコアは4群で差がなかったが(p≥0.05)、治療後は全群で有意に改善し(p<0.05)、DRUG群とDRUG+TOY群の減少幅はTOY群と対照群より大きかった。DRUGとDRUG+TOYの間、TOYと対照の間には有意差がなかった。多変量解析では、攻撃スコアと関連していたのは「人と犬の関わり方」と「飼育管理のやり方」で、飼い主や犬の属性(年齢や性別など)は関連しなかった。フルオキセチンの副作用は初週の眠気と食欲低下が中心で、玩具を併用した群ではより少なかった。

著者らは「フルオキセチンは環境エンリッチメントと飼い主教育だけより飼い主向け攻撃行動を減らす効果が高い」と結論しつつ、「エンリッチメントと教育は犬の福祉を改善し、攻撃を持続的に減らす・予防するうえで欠かせず、薬物療法と併用することで治療成績を高めうる」と強調している。攻撃行動の背景に「人との関わり方」があったという結果は、しつけの厳しさより日々の接し方を見直すことの大切さを示唆する。ただし4週間という短期の評価で、薬をやめた後の経過は分かっていない。飼い主への攻撃がある犬は自己流で対処せず、まず獣医師(できれば獣医行動診療の専門家)に相談し、薬物療法と行動修正を組み合わせた計画を立ててほしい。

📖 Veterinary Medicine International, 2026, 2026, 6224941

🔗 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42540681/

🧠 行動・認知科学


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